2008-09-21

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『追憶のハルマゲドン』 カート・ヴォネガット

追憶のハルマゲドン

退治を科学的に行なおうとする天才科学者ターベル博士の奮闘をユーモラスに描く表題作はじめ、第二次大戦中に体験したドレスデン大空襲を語るエッセイ、死の直前に書き上げたスピーチ原稿、手紙、短篇などの未発表作を著者自筆イラストとともに収録する、最後の作品集

今日はSFでも読もうとか、次はホラーでも読むかとか、そんな拘りとはまったく別にヴォネガットが読みたいという日があって、やっぱりヴォネガットヴォネガット以外の何ものでもないのだなあとしみじみ思う。短編よりも長編の方がらしいと思うし、ここに収められた作品もやっぱりちょっと軽くて物足りなさが残るものの、それでもヴォネガットを読んだ後に必ず湧き起こるあのなんともいえない憤りや怒りや優しさの入り混じった複雑な感情は、この短編集でも変わらず味わえた。

作品で、講演で、エッセイで、そして解説で、と繰り返し語られてきたドレスデンでの空爆の体験は、ここに収録された第二次大戦を直接の舞台にしたもの、またそうでないものも含め色濃く影を落としているが、長い人生の果て作家は一体どんな境地に至ったのか。中学生くらいの頃にTVの深夜放送で映画版『スローター・ハウス5』を観て以来ずっと長いこと(休み休みながら)追い続け、つい先ごろその訃報に接し、といった経験を経たことで、今回他の作家ではまだ味わったことのない不思議な余韻と共に本を閉じることになった。しかし本は閉じても芽生えた感情はそこで終わることはない。世界がこのまま転がり落ち続ける限り、きっとこの先も折に触れ読み返すことになるのだろうと思う。

『天の光はすべて星』 フレドリック・ブラウン

天の光はすべて星 (ハヤカワ文庫 SF フ 1-4)

97年、人類は星々に対する情熱を失い、宇宙開発計画は長い中断の時期に入っていた。星にとり憑かれた57歳のもと宇宙飛行士マックス・アンドルーズは、そんな世界で無為の日々を過ごしていた。しかし、木星探査計画を公約に立候補した女性上院議員候補の存在を知ったとき、彼の人生の歯車は再び動き始める。もう一度、宇宙へ――老境に差しかかりつつも夢のために奮闘する男を、奇才ブラウンが情感豊かに描く古典的名作。

足元を固めることもなく、身近なものへの認識も疎かなまま全てを捨ててまで(あるいはそこからの逃避なのか)、宇宙だ星だと浮かれる作品にはもう乗れないかもしれない。と思っていたのだが、これはよかった。

しかし宇宙開発を取り巻く状況やら遅咲きの恋愛といった面倒なしがらみを逃げることなく書いているところや、その果ての挫折やそれでも萎むことのない希望といったところに惹かれるばかりで、素直に遠い星への好奇心が疼かなかったりするのは、若い頃に本書のタイトルから連想したわくわくする感情とは随分遠くかけ離れてしまったものだと気づいた。それでも歳とともに移り変わってゆくこんな感情を独り静かに転がしつつ悶々としてみたり、さもありなんと無理やり落ち着けてみたり、といった遊びもそれなりに楽しかったりする。若い頃に読んでいたとしたらそれほど面白いとは思わなかっただろうから、これは今読んで正解だったのかもしれない。巷での評価とは別な意味でかもしれないけれど、これは名作だと言いたい。

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曇りがちで風もあるため、今日は家の周囲の散歩だけ。

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虫たちの顔ぶれを眺めているだけですでに秋の気配を色濃く感じるのは、その先にやがて来たる寂しい冬を強く連想するからか。